産後の腰痛に悩むママさんは多く、産後1年経過しても腰痛が続いているという方も多くいらっしゃいます。その辛さは一人一人異なりますが、そんな中で慣れない育児をしなければいけないので、一日も早く痛みを解消したい気持ちが強いかと思います。育児で無理な姿勢をとることが多いので、腰痛は仕方がないかと思いがちですが、自分で行える適切なストレッチで、腰痛の改善が期待できるのです。忙しい毎日なので、自分で対策を取ることができれば嬉しいですよね。今回は、腰痛の効果的な治し方についてお話します。
産後の腰痛の特徴
女性の体は、出産の過程で大きな変化があり、この期間に多くの女性が腰痛を経験します。ホルモンバランスの変化や骨盤の広がり、腹筋の筋力低下など、原因は多岐にわたります。産褥期には、体が妊娠前の状態に戻ろうとするため、子宮が収縮して元の大きさに戻ったり、ホルモンのバランスが再調整されたりします。この過程で、腰痛を引き起こす可能性が高まります。産後の腰痛は、ホルモンバランスの変化や骨盤のゆがみ、育児による負担などが原因で起こります。
産後腰痛の特徴としては、以下のようなものがあります。
・腰部に鈍い痛みを感じる
・特定の動作をしたときに鋭い痛みを感じる
・痛みが数週間から数ヶ月にわたって続く
これらの症状は通常は産褥期が終了するまでに軽減しますが、適切なケアを行うことで回復が早まる場合もあります。例えば、適度な運動やストレッチ、正しい姿勢の維持が効果的です。
産後の腰痛の原因
産後の腰痛は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生しますが、主に以下の原因があると考えられています。
①ホルモンバランスの変化
出産後、女性の体内ではホルモンのバランスが大きく変化します。特にリラキシンというホルモンが分泌され、関節や靭帯を柔らかくして骨盤を広げる働きをします。このホルモンの影響で関節や靭帯が柔らかくなっているため、腰や太ももの筋肉が代わりに支えることになります。その結果、いつも以上に負担がかかり、腰痛になりやすくなります。リラキシンの分泌は、妊娠中から出産後数週間にわたって続きます。
②骨盤のゆるみ
出産時に骨盤は大きく広がりますが、広がった骨盤が元の位置に戻るには時間がかかり、その過程で腰に負担がかかります。骨盤が不安定な状態では、体を支えるために周囲の筋肉や靭帯に過度な緊張が生じて腰痛が発生します。また骨盤が元の位置に戻らない場合、長期的な腰痛の原因となってしまいます。
③腹筋の衰え
妊娠中、腹筋は伸びて弱くなります。腹筋が弱くなると腰椎を支える力が低下し、腰に負担がかかります。産後に腹筋の戻りが遅いと、腰痛が長引く原因となります。
④妊娠や育児による姿勢の変化
腰痛の原因として、妊娠中や出産後の姿勢の変化が関係しています。赤ちゃんの成長に伴いお腹が膨らむことで、背中、腰、骨盤の位置を変化させ身体のバランスを保つようになります。この姿勢の変化により背中の筋肉に負担がかかり腰痛を引き起こすといわれています。育児では、抱っこや授乳などの姿勢が腰に負担をかけることがあります。前かがみの姿勢が続くと、腰の筋肉や関節にストレスがかかり、腰痛を引き起こします。
赤ちゃんを片手で抱えながらの家事や、無理な姿勢での授乳は腰に大きな負担をかけますので、正しい姿勢を保つことが重要です。
姿勢と筋肉の関係
妊娠中は大きくなったお腹を支えるために背中側の筋肉が過剰に収縮し、お腹側の筋肉は引き伸ばされ収縮しにくくなります。そのため、体幹のバランスが取りづらく全身の筋肉は柔軟性が低下します。また、骨盤の底にある筋肉を骨盤底筋といい、姿勢を安定させる重要な働きがありますが、妊娠中から産後はこの骨盤底筋が緩みやすく、姿勢の崩れが生じやすくなります。そのため骨盤底筋のエクササイズを行うことは腰痛改善や尿漏れの予防になるのです。各部位にあわせたエクササイズやストレッチを行うことが腰痛改善に繋がることがおわかりいただけたかと思います。
日常生活での注意点
産後の腰痛は多くのママさんが経験する症状ですが、正しく対策することで改善することができます。日常生活での注意点をご紹介します。
正しい姿勢を保つ
長時間の前かがみの姿勢や、片手で赤ちゃんを抱える姿勢は腰に負担をかけます。授乳や抱っこの際には、背筋を伸ばし、赤ちゃんを体に近づけて抱くようにしましょう。椅子に座って授乳する場合は、背中にクッションを置いてサポートするのも効果的です。
体を冷やさない
体が冷えると、筋肉はより緊張状態になり、腰痛も悪化してしまいます。温かいタオルやカイロを腰に当てて血流を改善したり、入浴で体をじっくり温めることをおすすめします。
適度な運動
軽いウォーキングは全身の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。無理のない範囲で、毎日少しずつ歩く習慣をつけましょう。
姿勢の改善
正しい姿勢は、すべての筋肉が本来の役割を果たせるので、負担がかかりません。普段から意識して正しい姿勢を取るように心がけると、腰痛も解消されやすくなります。椅子に座る際は、背中をまっすぐにし、床に座る際は、お尻の坐骨の下にクッションを入れるなどして腰の負担を減らします。また、長時間同じ姿勢を続けないようにし、定期的に体を動かすことが重要です。
産後のおすすめのストレッチ
ストレッチには凝り固まった筋肉をほぐし、血行を促進する効果が期待できます。ご紹介するストレッチの中からお気に入りを見つけて、是非毎日行っていただければと思います。ここで紹介している産後の腰痛改善エクササイズは、出産後2週以降で体調が安定してから行うことをおすすめします。息を止めないようにゆったりとした呼吸で行いましょう。体調にあわせて無理のない範囲で、いずれも1回に10回ほど行い、1日に数回行うとよいでしょう。ただし、腰痛の状態によっては、ストレッチでさらに痛みが強くなる恐れもあるため、必ず痛みを感じる手前の気持ちいいと感じる部分でとめるようにしてください。
骨盤底筋エクササイズ
骨盤底筋を鍛えることで、腰痛の改善が期待できます。仰向けに寝て膝を立て、骨盤を軽く持ち上げます。お尻の穴をギュッとすぼめるイメージで行います。
腰回りのストレッチ
肩幅くらいに足を広げて立ち、骨盤の横に両手を当てて腰を回します。時計回り、反対回りとそれぞれ回します。
寝ながらストレッチ
体をまっすぐにして仰向けになり、片方の脚を上げて反対側の膝のあたりに向けて倒し、腰をひねります。反対側も同じように繰り返します。
キャットアンドドッグ
四つ這いになります。息を吐きながらおへそを見るようにゆっくりと背中を丸めます。今度は息を吸いながら天井を見るように背中を反らします。
ふともも裏のストレッチ
椅子に浅く腰掛け、片方の脚を真っすぐ伸ばし踵を地面につきます。背筋を真っすぐに伸ばし、身体を前へ傾けます。反動をつけずにふとももの裏を無理のない範囲で伸ばします。
鼠径部のストレッチ
お尻の半分だけ椅子に腰掛け、脚を前後に開きます。背筋を真っすぐに伸ばし、後ろに脚を伸ばしていきます。反動をつけずに鼠径部を伸ばしていきます。
最後に
骨盤や腹筋の筋力が妊娠前の状態に戻るには時間がかかるため、継続的なケアが必要です。正しい姿勢を心がけたり、軽いストレッチを行ったりすることで緩和できる場合もありますが、どうしても解消できない場合は、私達にご相談ください。全身の筋肉をほぐし、骨盤を良い状態に整え、腰痛も改善していきます。また、腰を痛めない日常生活の過ごし方や、その方に合ったセルフケアの方法もお伝えしていますので、お体のお悩みを是非ご相談ください。