帝王切開になるママさんの割合
出産には、経腟分娩のほかに帝王切開という方法があります。帝王切開とは、何らかの理由で経腟分娩が難しいと判断された場合に、ママのおなかを切って赤ちゃんを取り出す方法です。厚生労働省の統計によると、分娩における帝王切開の割合は増加傾向です。全体で見ると、約4.6人に1人が帝王切開で出産していることになります。
帝王切開術後のママの身体
産後のからだの変化は大きく、妊娠で大きくなった子宮が妊娠前の大きさに戻るには6週間から8週間かかります。帝王切開での出産後でも同じです。帝王切開術では、おなかの皮膚を10~15㎝ほど縦または横に切開し、腹筋や子宮も切開して、赤ちゃんを取り出します。
出産後は妊娠中に伸びたおなかの皮膚がすぐに戻らずにたるんで、帝王切開後の傷口を覆う状態になります。特に横切開の場合は、皮膚のたるみが傷口を覆うため、傷口の負担になりやすいと言われています。帝王切開術後はおなかに力が入らず動きにくくなったり、動作時に痛みを感じやすくなります。
しかし、出産翌日からは、身体の回復のために歩いたり、赤ちゃんのお世話をすることになります。お腹に力をかけにくかったり、傷に触れると痛みのある中での育児は大変です。
腹帯を着用することで、傷口やたるんだ皮膚・筋肉を固定し、おなかに力を入れやすくなるため、動きやすくなり、動作による痛みを減らすことができます。
帝王切開術後は、術後すぐから出産後2~4週間後、痛みを感じなくなる頃までの腹帯の着用が推奨されています。また、傷跡を気にされているママさんも多いですが、傷跡がどの程度目立たなくなるかは体質にもよるため個人差が大きいです。
ただ、最近では、帝王切開の傷跡を目立たなくするための、傷跡ケア専用のテープが販売されています。傷跡をできるだけ目立たせたくない場合は、そのようなテープを使用するのもいいかと思います。
ケア方法がわからないときなどは、かかりつけの産婦人科で相談してみてください。傷跡に下着があたると、摩擦によって傷跡が目立ってしまうことがあります。下着や洋服はできるだけ傷跡の位置にゴムがあたらないものを選ぶようにしましょう。
経膣分娩と帝王切開の回復度合いの違い
経腟分娩は産後の経過に個人差が大きいので、回復度合いを比較するのは難しいかもしれません。また、帝王切開でも経腟分娩でも、産後のママの体は非常に疲れていますので、家族にサポートしてもらうなどして無理をしないようにすることが大切です。帝王切開で出産したら骨盤は開かないと考えている方もいるかもしれませんが、産後の骨盤が開いているのは経腟分娩も帝王切開も同じです。もし、産後に骨盤に違和感を覚えた場合は、骨盤ケアなどを受けることをおすすめします。
帝王切開後の産後の過ごし方
帝王切開後の生活では、身体に負担をかけずに生活することが大切です。産後約1ヵ月は、しゃがんだり、重いものを持ったりなど、おなかに力を入れる行動をとると傷口が痛む可能性があります。
家族に協力してもらったり、各サービスを利用しながら、身体に負担のかからない生活を送ることが大切です。術後は、手術の傷による痛みとともに後陣痛があります。どちらも痛みを伴いますが、手術の傷の痛みはちょっとした工夫で軽減することもできます。傷口が引っ張られたり強い圧がかかったりすると痛みが強く出てしまいます。そういったときは、傷口をタオルなどで軽く押さえながら動くと痛みが軽減されます。
また起き上がりや移動する時などに身体をねじらないようにしてください。上半身と下半身が一体となって寝返りや起き上がりを行うとよいでしょう。両方の肩と腰が同じ方向を向いているように、傷口のあたりに両手をあてながら少しずつ動くことで痛みは軽減できます。
帝王切開後の回復を早める生活
①たっぷり睡眠をとる
帝王切開での出産も自然分娩と同様に体への負担は大きいです。それに加え傷口の回復を待ちながら赤ちゃんのお世話も始まります。そうなると体を休める時間はとても貴重です。時間の許す限り睡眠をとって体を回復させることを優先させましょう。
②栄養がある食事をとる
退院後も栄養のある食事を心がけましょう。産後の体が回復するまでには6週間以上かかります。傷の回復のためにも栄養をつけましょう。特に鉄分と葉酸が必要と言われています。妊娠中からの貧血や出産時の出血、授乳などで鉄分が失われる機会がとても多いです。貧血の防止に鉄分は欠かせません。意識して摂るようにしましょう。妊娠前にも摂ると良いとさえていた葉酸は産後にも必要な栄養です。これは赤血球を作るために必要な栄養素なので貧血の防止になります。
③よく歩く
傷口の痛みの程度によりますが、手術翌日から歩行可能です。血栓ができることを防いだり、癒着を防いだりするためにはなるべく術後早いうちから体を動かすことが必要です。少しずつで良いので歩けるように努力しましょう。
④ゆったりした服を着る
傷跡がこすれると摩擦によって傷の治りが遅くなったり痒みが出たりします。術後しばらくは、マタニティ用の下着やズボンなど締め付けのないゆったりとした服を着るようにしましょう。
帝王切開後の骨盤
帝王切開での出産は、赤ちゃんが産道を通っていないため骨盤はそれほど広がっていないのではと考えるママさんもいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません。妊娠初期の段階から、リラキシンというホルモンが分泌され、骨盤周辺の靭帯が緩みます。普通分娩でも帝王切開でもこのホルモンの働きに変わりはないため、普通分娩であっても帝王切開であっても、産後の骨盤は歪みやすいのです。帝王切開では外科的に赤ちゃんを取り出すため、骨盤の広がりが自然に収縮しにくく、歪みが残ることが多いと言われています。このようなことから、普通分娩でご出産された方も、帝王切開でご出産された方も骨盤矯正で骨盤を正しい位置に戻す必要があります。傷口が完全に治癒するまでは無理な動きは避けなければなりませんが、一般的には、産後2ヶ月頃から骨盤矯正を始めることが多いです。個人差がありますので、体調や傷口の状態で判断することが大切です。
最後に
帝王切開で出産された場合も骨盤は緩んでいます。帝王切開はおなかを切開する手術であるため、身体の負担は普通分娩より大きい状態にありますし、産後は子育てで慌ただしい毎日だと思いますが、自分のお身体を大切にするよう注意を向けてみてください。産後の身体は、早い段階でケアをしておくことが今後の負担を減らすことにつながりますので、ぜひお気軽にご相談ください。